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色彩心理・色の不思議な話-色彩学の基礎
私が「色」についてのコラムを書く時。
コラムを読んでくださる方が最近「惹かれる色・気になる色」には、どんな心理が投影されているか。
というテーマで書くことが、最も多いと思います。
でも、考えてみたら、「色彩の基礎」について、これまでコラムでお伝えしたことがなかったかなぁと。
今日は、そもそも「色」って何でしょう? なぜ見えるのでしょう?
という「色の基本の部分」を書いてみようと思います。
目次
そもそも、色はなぜ見えるのでしょうか?
私たちの周りには無数に色が存在しています。
でも、なぜ「色」があるのか?と、ふだん意識することはないかもしれませんね。
あたりまえの様に、身の周りにある色。
あたかも、物体そのものに「色がついている」ように見えるのですが。
実は、物体に、最初から色がついているわけではありません。
でも、私たちは「色を見て」います。なぜ、見えるのでしょうか。
私たちが「色」を認識するためには、3つの条件が必要です。
その3つとは、「光(光源)」「物体」「眼(視覚)」になります。
この3つが揃わないと「色」は存在しないのです。
例えば、りんごが赤く見えるのも、りんごの表面に「赤い色」がついているわけではありません。
「光」の無い暗闇では、私たちは「りんごの赤い色」を見ることができませんね。
「太陽光」の中の「赤の領域の光」を「りんご」が反射し、その反射した光を私たちの「眼」がとらえて、脳へ情報を伝達して、初めて「赤い色」を感じることができます。
「光源からの光が → 物体に当たり、反射・透過・吸収され → 人間の眼に入り → 情報が大脳に伝わり →色が感知される」
というしくみです。
物そのものに「色がついている」のではなく、物が反射した光によって「人が色を感じている」と言えます。
(参考文献:色彩検定協会監修『文部科学省後援 色彩検定公式テキスト3級編』)
いろいろな色が見えるのは、なぜでしょう?
太陽の光や蛍光灯の光は、無色透明に見えますね。(「白色光(はくしょくこう)」と呼ばれています。)
無色透明に見える光ですが、実は「人が感じることのできるすべての色の要素」が含まれています。
「光」は、電磁波の一種。光は、振動しながら進んでいます。
テレビやラジオの電波やエックス線と同じように、電磁波の一種なのです。
電磁波は「振幅(しんぷく)」と「波長(はちょう)」で表すことができます。
・振幅とは、波の山の高さのことで、波の大きさを表します。
・波長とは、波の山から山までの長さのことで、波の周期的な変化の程度を表します。
(参考文献『文部科学省後援 色彩検定公式テキスト3級編』)
電磁波は「波長の長さ」によって分けられて、利用される分野も異なっています。
人の目に届く「可視光線(かしこうせん)」は、約380 ~ 780 nm(ナノメーター※)の範囲の波長になります。
※ 1nm (ナノメーター) = 100万分の1mm (ミリメーター )
電磁波には他に、電波、赤外線、紫外線、エックス線、ガンマ線などがありますが、これらは人間に色覚を生じさせる範囲外にある波長で、人が見ることはできません。
では、なぜ「いろいろな色」が見えるのでしょうか?
私たちが感じる「色の違い」は「光の波長の違い」により生じています。
17世紀後半、イギリスの物理学者アイザック・ニュートンは、太陽の白色光をプリズムを通して分光(ぶんこう)し、「無色透明に感じていた白い光が、さまざまな色の光の集まりであること」を証明しました。
ちなみに私は、小学生の時、理科の時間にプリズムを使って、この「分光」の実験をしました。
「透明な三角柱の形のものに光を集めると、光が屈折。波長の違いにより、屈折する角度が違うため、分光されてスペクトル(虹の色)が現れる」という実験。
皆さんは、ご経験がありますか?
最近も、授業にあるのでしょうか???
雨上がりに見られる「虹」の七色は「赤・橙・黄・緑・青・藍・青紫(菫)」です。
この範囲が、約780 ~ 380 nm の波長で、波長の長い方が「赤」、短い方が「青紫」になります。
この範囲外にあるのが「赤外線」「紫外線」になります。
「色」の情報は、「大脳」に届いて初めて「色」として知覚されます。
物体に当たり、反射・透過・吸収された光は、眼に届いて、視細胞を刺激します。
眼の中には「網膜(もうまく)」があって、光の刺激を受け止める視細胞が2種類存在します。
色を見分ける機能を持った「錐体細胞(すいたいさいぼう)」と、明暗を感知する「かん体細胞(かんたいさいぼう)」です。
「網膜」に達した光は、視細胞で神経信号に変換され、神経節細胞(しんけいせつさいぼう)へと伝えられ、視神経(ししんけい)を通じて脳へ送られて視覚となります。
網膜で受けた情報は、大脳へ送られて初めて「色」として知覚されます。
知覚が生じるまでには、大脳の判断が加えられているのです。
「光」や「物体」は「そこに有るもの」です。
でも、「色」は、そこに着いているわけでなく「人が感知しているもの」です。
前述したように
たとえば
赤く見える物体は、太陽光が当たると「可視光」の「長波長(赤の領域)の光を多く反射」するため
それが「赤」と知覚されます。
白く見える物体は、太陽光が当たると、可視光のほぼ全ての波長域を「反射」するので、「白」と知覚されます。
黒く見える物体は、太陽光が当たると、可視光のほぼ全ての波長域を「吸収」するので、「黒」と知覚されます。
(参考文献:色彩検定協会監修『文部科学省後援 色彩検定公式テキスト3級編』)
「人の外側にある刺激」と「人の内側で起こる現象」がつながることによって、初めて存在するのが「色」といえますね。
この事実を知ると、「色は、人の内側に持っているものと結びついて認識される。」ということが理解しやすのではないでしょうか。
「好きな色、苦手な色」「惹かれる色」「気になる色」が、ココロとつながりやすい理由が、なんとなく分かってきませんか?
色の心理的作用について
私たちは、ある色のものを見たときに、実際にはそうではないのに「そのような感じがする」という印象を持つことがありますよね。
◆ 色には「暖かい・冷たい」の印象があります。
実際には同じ温度である二つの物があった時に、色の違いによって「暖かい(温かい)・寒い(冷たい)」の印象に違いが出ることがあります。
色の「暖寒」の印象と大きく関わるのは、「色の属性」の中でも「色相(色みの性質)」になります。
例えば、部屋のソファの上に、オレンジのクッションと、青のクッションが置いてあるとすると、一般的には、オレンジの方が暖かく感じられます。
例えば、オレンジ色のガラスのコップに入った水と、青いガラスのコップに入った水を比べると、一般的には青いコップに入った水の方が冷たく感じられます。
飲料水・食品のパッケージや、インテリア雑貨、洋服など、身の回りにある製品には、この「色の暖寒の印象」を活かしているものが沢山あります。
「赤・オレンジ・黄」など、暖かく感じられる色を「暖色」、「青」など、冷たく感じられる色を「寒色」と呼びます。
「緑」や「紫」などは「暖かい・冷たい」の感じが無いので「中性色」と呼びます。
◆ 色には「軽い・重い」の印象があります。
実際には同じ重量である二つの物があった時に、色の違いによって「軽い・重い」の印象に違いが出ることもあります。
色の「軽重」の印象と関わりがあるのは、「色の属性」の中の「明度(明るさの度合い)」になります。
一般的に「明るい色」は「軽く」感じられ、「暗い色」は「重く」感じられます。
実際には、同じ大きさ・同じ素材の「白」と「黒」のスーツケースがあった場合、見た目には「白」の方が軽く感じられます。
宅配便のダンボールに「白」が採用されているケースがありますが、「軽く」感じさせることで、作業効率をアップできるからなんです。
◆ 色には「柔らかい・硬い」の印象があります。
色が「柔らかさ・硬さ」の印象につながることもあります。
色の「柔らかさ・硬さ」の印象と大きな関わりがあるのが、「色の属性」の中で「明度」になります。
一般的に「明度が高い(明るい)色」ほど「柔らかく」感じられ、「明度が低い(暗い)色」ほど「硬く」感じられます。
また、暖色の方が寒色より、少し柔らかく感じられます。
◆ 色には「興奮・沈静」作用があります。
色には、人の感情に働きかける「興奮作用や沈静作用」もあります。
色の「興奮感・沈静感」と関わりがあるのは、「色の属性」の中の「色相」と「彩度(鮮やかさの度合い)」になります。
鮮やかな暖色系の色は、人に興奮感を与えます。彩度が低い寒色系の色は、人に沈静感を与えます。
実際に実験で明らかになっているのですが、「暖色系」の「赤」の部屋に居る時には、人は、活動モードの交感神経が優位になり、「寒色系」の「青」の部屋に居る時には、休息モードの副交感神経が優位になります。
「赤」を見ると筋肉が緊張し、血圧が上昇し、脈拍が速まる反応や、「青」を見ると筋肉が弛緩し、血圧が降下し、脈拍が安定するような反応は、人が進化の過程で獲得したものと考えられているんです。
◆ 色には「進出・後退」の印象があります。
自分から同じ距離の位置にある、同じ大きさの物体でも、色によって、近くに見えたり、遠くに見えたり、という違いが出ます。
近くに見える色を「進出色(しんしゅつしょく)」、遠くに見える色を「後退色(こうたいしょく)」といいます。
赤・オレンジ・黄など「暖色系の色」は、近くにあるように見えます。
青など「寒色系の色」は、遠くにあるように見えます。
◆ 色には「膨張・収縮」の印象があります。
実際には同じ大きさの物でも、色によって「大きく見えたり、小さく見えたり」ということもあります。
大きく見せる色を「膨張色」、小さく見せる色を「収縮色」といいます。
「膨張・収縮」に深く関わっているのは「明度」です。
明度が高い(明るい)色は大きく見え、明度が低い(暗い)色は小さく見えます。
人が見ることのできる色の中で、一番明るい色が「白」、一番暗い色が「黒」になります。
よく知られている話ですが、「碁石(ごいし)」は、白と黒で大きさが異なります。
黒の方が、白よりも大きく作られています。
これは、同じ大きさにしてしまうと、白の方が大きく見えてしまうからです。
同じ大きさに見えるように、調整されているのです。
黒の碁石は直径が 22.2 mm、白の碁石は直径が 21.9 mm、だそうです。
(参考文献:色彩検定協会監修『文部科学省後援 色彩検定公式テキスト3級編』)
以上、今日は「色彩学の基礎」について少し書いてみました。
いかがでしょうか?
「色」って面白いなぁ、と感じていただけましたでしょうか?
これから、身の回りの色を見るときに、
「この色って、柔らかく感じさせる色なんだなぁ」
「この色は、気持ちを静めてくれる色なんだなぁ」
「重たく見えるのは、この色のせいでもあるんだなぁ」
など。
ちょっと興味を持って、「色」を感じていただけたら嬉しいです。
色彩のサポートを受けながら。今日も素敵な1日を。
色彩心理について「動画」で解説しています。ぜひ、ご覧ください!
YouTube【私色のつばさチャンネル】にて、動画で「色の持つ4つのチカラ」の解説を行っていますので、是非こちらもご覧ください。
引用元:色の持つ4つのチカラ ~ 色とココロのコンシェルジュ 佑貴つばさ~
(文中に使用したぬり絵柄 : © 末永蒼生 HEART & COLOR CO.,LTD / 参考文献 :『心を元気にする色彩セラピー』 末永蒼生著 PHP研究所、『文部科学省後援 色彩検定公式テキスト3級編』色彩検定協会監修、『色彩学校本科 色彩心理基礎 テキスト』末永蒼生監修 色彩学校編集、『色彩心理のすべてがわかる本』山脇惠子著 ナツメ社、『はじめてのパーソナルカラー』トミヤママチコ著 学研パブリッシング)
佑貴つばさ(ゆうきつばさ)
「色とココロのコンシェルジュ」色彩心理カウンセラー
文中に使用したぬり絵図柄 : © 末永蒼生 HEART & COLOR CO.,LTD
Les Ailes de Ma Couleur(レゼル・ド・マクルール)~私色の翼~
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